刀剣乱舞無双 其の八十六

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刀剣乱舞無双 其の八十六

審神者「この鯰尾、とっても綺麗」

鯰尾「俺はいつでも綺麗で清潔だよ?」

骨喰「清潔……?」

鯰尾「そこ疑問符つける?」

審神者「輪郭を両手で包みこんでほっぺほわほわしたい」

鯰尾「いいよー。 ほい」

審神者「お前じゃないのです……」

骨喰「そう言いながら触るな」

鯰尾「ほわほわ~」

審神者「!?」

鯰尾「へー。 薙刀ってこんな足してたんだ」

審神者「こんなん図録にも載ってない情報やん。 刀剣乱舞無双すげー」

骨喰「まるで……鳥の足のようだな」

審神者「日向くんにふっ飛ばされた薙刀がなんだか空を飛んでいるみたいだったから、面白い一枚撮れないかなとフォトモード発動したらとんでもないものを見つけてしまった……。
え……時間遡行軍の薙刀って鳥なの?」

骨喰「巴形の服にも鳥の羽があるから、薙刀と鳥には関連性があるが……」

鯰尾「静形のもこもこもフェザーっぽいよね。
髪型とかもちょっと鳥っぽいし。
岩融には鳥を連想させるものはないけど」

審神者「鯰尾と骨喰も実は鳥なの……? 昔、鳥だったの!?」

骨喰「鳥だった記憶なんてない」

鯰尾「ちゅん、ぴよっ!」

骨喰「……岩融には己の核となる主がいるが静形と巴形にはいない。
そういう薙刀が鳥の要素を持っているんじゃないか?」

審神者「時間遡行軍が持っている薙刀って静形なのよねぇ……。
うーん……っていうか時間遡行軍の薙刀から薙刀奪い取れば静形の習合快適に進むんじゃね?

鯰尾「そんなの習合したら静形に悪影響が出そう」

審神者「でも静形って名も無い静形薙刀の集まりだから、あれも静形薙刀と思うんだけどなぁ……。
時々考えるけど、時間遡行軍の静形薙刀と刀剣男士の静形薙刀って何が違うんだろう。
物はどっちもまったく同じ静形薙刀のはずなのに……」

骨喰「違うとしたら主だろう」

審神者「だとしても外見は同じになるんじゃないかな?
刀剣男士の静形薙刀と時間遡行軍の静形薙刀をここまで別物に分けているものって何なんだろう」

鯰尾「……物語が違うとか?」

審神者「物語?」

鯰尾「例えば……。
刀剣乱舞以外の物語で鯰尾藤四郎という刀が擬人化されたとして。
それって付喪神で刀剣男士の俺じゃないじゃん?
でも、俺もそいつも鯰尾藤四郎じゃん?
そういう違いなんじゃないかな。
俺たちには俺たちの物語があるように、時間遡行軍には時間遡行軍の物語がある。
物語の紡ぎ手が現実に存在する鯰尾藤四郎という食材をどう料理して使うのか。
料理の仕方によって出来上がってくる俺が違う。
敵の静形薙刀は刀剣男士の静形とは違う調理方法で出来上がった静形。
だから同じ静形薙刀という食材を使っていても、時間遡行軍と刀剣男士として、味も見た目も全然違う料理が出来上がる」

骨喰「わかりやすい説明だった。
だが、三日月は時間遡行軍に「物語を与えよう」と言っていた。
あいつらは物語を持っていない」

鯰尾「そこはきっと、物語がないという物語。
静形や巴形にだって最初は物語がない。
その分あいつらはここで物語を紡ぐって言っていたけど……。
時間遡行軍にとっては歴史改変がそれに当たるんじゃないかな?
朝尊が本能の話をしてただろ。
歴史を守るのは刀の本能……。
あれってもしかしたら、自分が存在する物語を守ることが俺たちにとっての本能なんじゃない?
あいつらが歴史を改変するのは本能。
物語を持たないあいつらは、歴史を改変しないと存在していられない。
だからその改変行為に物語は無くて、自分が存在する為の本能で動いてる」

骨喰「……なんだかそれって、審神者みたいだな。
各々で俺たちを改変しないと審神者として存在していられない。
この物語の中に自分が存在する余地がないから、この物語と共にある自分の心が存在する為に本能でそれを行っている。
……時間遡行軍も、そうなのだろうか」

審神者「審神者もピンキリだからね。
あなたたちの物語をしっかり受け取ろうとした結果として間違えてしまう場合もあれば、最初からあなたたちの物語なんてどうでもよくて、刀剣男士を自分が好きにしていいお人形のように思っていて、故意に自分の心と物語を押し付けている場合がある。
願わくは私は石田君と蜂須賀が話していたような虎徹を知り虎徹を研究して本物の虎徹を見分けて偽物の中から救い出せる人間でありたいものよ。
本物なんてどうでもいいとか、みんな本物でいいだとか、本物なんて存在しないだとか言われたくない。
本物の刀剣乱舞と刀剣男士の良さがわかる私で在りたい。
そんじょそこらの中途半端な作りのなまくら刀と、あの丹念に織り込んで鍛え上げられた名剣名刀たちを一緒にしないでほしいわ」

鯰尾「主って俺たちのことなまくら刀って思ってたの?」

審神者「彼らと比べたら比べ物にならないくらいのなまくらよ。
鯰尾藤四郎の名前で鯰尾面するなんて、虎徹の名を語って虎徹面する偽物も同じよ」

鯰尾「それでも長曽祢ぐらいには、本物と違わぬ強さを持っているつもりだけどな、俺は。
本物にはなれなくても、本物と同等の強さを主が俺に望んでくれているから。
……主の刀としてなら、きっと本物以上に活躍するよ?
というか偽物だからこそ、俺はそうならなきゃいけないような気がする。
伝家の宝刀は抜かないうちが華。
そうすることで威光を保てる。
いつでも抜ける、だから抜かない。
抜いてしまったらそれはもう、後がなくて追い詰められていることを権威の失墜と共に周りに知らしめるだけだから。
俺たちが自分が本物であることを言葉を抜いて示さないで、ただそこに在るだけで示すってそういうことなんじゃないかな。
だからそんな俺に代わり、刀を抜いて言葉を尽くして外界で生きる主の荒事に付き合うのは俺の役目。」
……俺が在る為の俺でもあると思うよ。
どう使うかは主次第だけど。
個に尽くさずすべての主を守るのがあっちの役目で、すべてに尽くさず個に尽くすのがすべての主に尽す俺が俺に与えてくれている使命なんだと思う。
他の主には他の俺が尽くしている、だから俺は主に尽す。
完璧に果たせれば鯰尾藤四郎のすべての主に尽す忠義も果たせると思うんだ」

審神者「直接鯰尾からそう言われた訳でもないのに、都合のいい勝手な解釈ね」

鯰尾「鯰尾藤四郎にそんな願いがなかったとしても、これが間違っているとは思わないから」

審神者「……ただ私が鯰尾と一緒に居たくて、それを鯰尾に許してほしいだけですよ。
一緒に居られなくても一緒にいたいって、互いにそう思っていたい。
互いのその気持ちを認め合って信じ合って離れていても想い合える……そんな関係でいたい」

審神者「神秘なる鯰尾藤四郎」

骨喰「顔色が悪いだけのようにも見える」

鯰尾「大丈夫。 表情はきりりとして元気」

燭台切「歌仙くん。
最近、よく強風が吹くと思わないかい?
洗濯物があちこちに飛んでいって、もう大変でさ。
いわゆる「春疾風」ってやつなのかな。
もう少し弱く拭いてくれれば、洗濯物も気持ちよく乾くのにね」

鯰尾「主がいつも春風吹かしまくるから……」

審神者「燭台切が困っているのは私のせいなの?」

歌仙「…ああ、そうだね」

燭台切「え、どうしたの歌仙くん?
なんだか露骨に不機嫌そうに見えるけど…」

審神者「え……私、歌仙に憎まれてる……?」

骨喰「春の強い風は折角咲いた花をすぐに散らしてしますから、それで憎んでいるんじゃないか」

審神者「あぁ……」

燭台切「へ、へえ…僕はそこまで言ってないけど…。
なんでまたそれほどに憎いんだい?」

歌仙「なんで、って…わかりきったことを聞くね。
…疾風は、咲き誇った花を無粋に散らすだろう?」

鯰尾「兄弟、正解!」

骨喰「歌仙が考えそうなことを考えれば、なんとなくわかる」

鯰尾「こないだまでは「わからない」ってぎゃあぎゃあぴーぴー言ってた癖に」

骨喰「…………。
……そうだな。 今でも難しい問題だ。
だが、それでも……信じられる仲間を探して、その日々の中で確かに信じられたものを信じていたい」

燭台切「確かに。
花吹雪は綺麗だけれど、そのぶん、咲ける時が短くなってしまうね…」

審神者「特命調査の熊本の強風。
あれはガラシャさんという咲いていてはいけない花を散らそうとする風だったのかな。
……風よ、願いを運んでく花嵐吹かせておくれ。
今は小さな蕾でも花開けば、あの人のところまで。
あの歌って今にして思えば、刀剣男士の「あなたを待っている」って気持ちを歌った歌だったのね……」

歌仙「花の運命と言えば、それまでだが…これからは貴殿も
疾風が吹くたび、花の儚さに思いを馳せるといい」

燭台切「…うん、そうしてみるよ。
気付かせてくれてありがとう、歌仙くん」

骨喰「皆の話を聞く限り、本丸の季節は春。
これには何か意味があるのだろうか」

審神者「春は花開く季節、花は心、冬の寒さが残りつつも心が開く季節。
この背景が大事かもしれない。
あとは発売日がちょうど春頃だったし、こっちの季節に合わせてきたのかも……。
いや、違うな……多分、物語に合わせて春に発売した可能性の方が高い」

鯰尾「そういえばいつも春だけどダウンロードで景趣もあるんだよね。
秋とか冬にしていたら、こういう話おかしくならない?」

審神者「景趣の名前がね。
季節じゃなくて「花見」とか「紅葉」とか「雪見」だから、景趣自体が季節って扱いじゃないのかも。
ホログラムに映った月も星も太陽さえもフェイクに過ぎないのかも」

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